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春樹の表情が険しくなる。怒鳴る春樹を思い出して怯みそうになったけど、もう別れるのなら関係ない!
「なんでじゃないでしょう。別れるんだから、当然でしょう。生活費、ずっと入れてくれてくれてなかったけど、それはもういい。でも結婚資金は」
「あれは俺の口座に入っているんだから俺の金だ!」
春樹が私の言葉を遮った。
「何言って––」
言葉を失う。
この人、本気で言ってるの!?
あり得ない、と絶句していると、立ち上がってきた春樹がいきなり私の腕を掴んだ。かなり強く。
「痛っ」
「今すぐ出ていけ、別れるんだからな」
寝室の外に私を引きづり出した春樹はクローゼットを開けてトランクを出し、私のタンスの中の物や化粧台のものを乱雑に突っ込んだ。
「何するの! 待ってよ、そんないきなり!」
抵抗も虚しく、私は靴と一緒に外に放り出された。
「この家は俺名義で借りてるんだ。他人のお前がこれ以上ここにいたら不法侵入で通報するからな! じゃあな!」
乱暴な言葉と共にドアは音を立てて閉まり、無情にも施錠される音が廊下に響き渡った。
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