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茶太郎は、父の知り合いが飼っていた犬だったけれど諸事情で泣く泣く手放さなければならず、里親を探そうとしていた所を父が譲り受けて我が家に連れてきた。
今まで犬や猫等の生き物を飼った事がないから、そんな父の行動に、どういう風の吹き回しだと家族一同驚愕したのが記憶に新しい。
茶太郎はまだ3歳。
元々の肉付きなのか、前の飼い主さんが可愛がり過ぎてエサを多めに与えていたのかは分からないけれど、ちょっぴり太め。
クリクリなお目々に短めな脚がチャームポイントの可愛いヤツだ。
こんがりとしたキツネ色で丸っこいもんだから、まるで大きなお稲荷さんみたい。
因みに、名付けは父。
毛が茶色いから茶太郎という、何とも安易なネーミングで多少の不満はあるけれど、父が連れて来た犬なので文句は言えない。
今遼くんと父が私達二人の将来についてのとても大切な話をしている最中なのは分かっているけど、もふもふ愛くるしい塊を前に気が逸れている。
撫でくり回したい衝動に駆られている。
「同棲などふしだら極まりない!」
「それは副社長の古臭い価値観です。時代に添った思考にアップデートすべきです」
「相変わらず小癪な……大体な、目を瞑ってやってはいるが、凪が頻繁に貴様の家に入り浸っている事すら俺は許可してないぞ」
早口で捲し立てる父がだらしなく寝そべっている茶太郎をチラリ。
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