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鳥肌が立つ。ぞっ、とはしていない。今、静脈血は表現欲に変わり、激情している。
興奮しているのだ。新しい小説のネタを見つけた感動――感謝もこのとき忘れちゃいけない――に、細胞が逆立っているのだ。
「さあ、入りましょう。Cafe Rissotは何でも揃う、町のカフェ。知る人ぞ知る隠れ家で、蟻やマチバトの中では有名。今日も、ほら、蟻の行列が見えるでしょう?」
そこは写真や想像よりも美しい、木造の二階建てだった。僕は想像に一定の自信があったので、それを超えてくるとは、と感服した。
そして、その麗容は、簡素な――道のアスファルトも茶がちな影響もあるだろうが――町並みに溶け込んでいるのだ。
椎名-英治がドアを開く。
仄かに昼顔の香がした。
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