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さて、これから断片的に語られるのは、とあるオフ会の事である。半日にも及ばない、確か、十年五時間二十二分の物語である。そして、
僕がオフ会を無事に終えるまでの、
私がとあるボールペンを使い切るまでの、
私が復讐に結果を持たせるまでの、
「しーな」と云う物語だ。
オフ会の会場への道のりは"表内通"と云う。正確には、…いや、この表現は不適切かもしれない。過去を遡った先の事実に、この様な前置きは相応しくないと思う。過去に遡れば遡る程、真実は粘着力を失った付箋目より不鮮明になるからだ。
何を言いたいかと云うと、この通は二百年程前の時代に、表洪寺の境内に繋がる通だった、と云う事だ。
しかし今、表内通を通る成人男性二人にとっては、オフ会の会場である、"Cafe Risotto"へと繋がる通なのだ。
それが二百年前から定められていたとしたら?そう発想させる程数奇な体験を彼らはこの後、身に灯す。だから過去の事を、正確には、と訂正するのが憚られたのである。
私は通の半ばの円形劇場の傍らに自生するカシノキだが、あの二人の内の、背が高い男の事は知っている。
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