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「自信はありませんが、聞いてみましょう」
「おい、おい、おい!誰がスリの常習犯の発言を許可したんだい?椎名-英治は、一昔前のAIの様に、与えられた命題だけに率直に答えるべきなんじゃないか?」
僕は非常に高揚してきた。
両腕をY字になるように掲げると、右の掌に赤い果実がくっついた。時計の長針と短針を止める具程の大きさだった。
名前は知らなかったが、椎名-英治の好物だと云う可能性に賭け、彼に手渡した。
そして僕は、改めて椎名-英治に一つ問うた。
「この通を歩いているとき、幾組かの通行人とすれ違った。彼ら――珍しいことに、女性とは一度も合わなかった――は全員二人一組だった。そこで、何組の野郎が散歩していたか、あなたは記憶しているかい?」
「確か、四組だったかと」
「天才だ!」
彼に追加の果実を渡す。
塀の上の猫は欠伸を大気中にばら撒き、庭に降り立った。どうやらビーグルだったようだ。
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