282人が本棚に入れています
本棚に追加
第一部①
「邪魔よ!」
『痛っ』
突然、突き飛ばされてバランスを崩した。恐る恐る私は義姉の顔を見上げる
「な~に。その顔は!
あなた、まさか文句でもあるの? ほんっとにその顔を見ると虫酸が走るわ。さっさと私の視界から消えてちょうだい」
『申し訳…ありません…』
「ほんっとにトロいんだから」
はぁ
義姉の癇癪や八つ当たりはいつものこと
ただ黙って耐えるしかない
私は10歳の時にこの家に引き取られた。それまで母と2人暮らし。決して裕福とはいえなかったけれど、優しい母と穏やかに過ごしていた。いつも忙しい合間をぬっては私との時間を作ってくれた。
気軽に新しいお洋服を買うことは出来ないので、ほつれているところを修繕してくれたり、野菜の切り方を教えてくれたり、一人で生活するために必要なことを教えてくれた。
嫌なことがあった時は、一緒に歌を歌って明るい気分になれるように励ましてくれた
今なら分かる。
母は私の前では無理をしていたのだと思う…心配をかけまいと。
倒れるその瞬間まで。
私もどこかで働きたかったけれど、子供のうちは遊ぶのが仕事だからと。
最初のコメントを投稿しよう!