第一部①

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 それでも働いて母を少しでも休ませてあげればよかった 気づかなくてごめんなさい……後悔しても遅いけれど 母が亡くなりしばらくすると、知らない人が迎えに来た。 父親の遣いだと名乗るその人が言うには、母は以前勤めていたお屋敷の主に見初められ、私を身籠ったと。 そのことが知れて奥様は激怒。 母は身重の体で屋敷を追い出されたのだそうだ。  そのお屋敷の主が私の父親だと。 母の訃報をどこから知ったのか、父親が私を引き取りたいと言っているから一緒に来て欲しいと。 その時の幼い自分の行動を思い出すと後悔するばかり。 どうしてなんのためらいもなくついて行ってしまったのか。 知らない人に付いていってはいけないと言われていたのに。 その方に連れられて、このお屋敷に来たときはあまりの広さ、豪華さに驚いた。今までの家とは比べ物にならなかったから 目を輝かせて興奮する私の心を打ち砕いたのは、初めて対面する父親の一言だった。 「お前はここで死ぬまで働くのだ。まずは躾が必要だな。」 部屋を出て行ってすぐに戻って来た父の手には、鞭が握られていた
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