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『お花見一緒に行く人いないんですよね~
誰か一緒に行く人いないかなって探してるんですよ~』
「いないでしょうね…送信。」
『今年もお花見いってくれるかわい~~彼女できなかったナ><
やっぱり可愛い女の子といきたいナ!(^^)!ナンチテ( *´艸`)』
「そんなんだからできないんでしょうね…送信。」
『土曜日あたりが満開みたいですよ。
そういえば、土日休みでしたよね?
季節の行事ひかれませんか?笑』
「そうですねひかれません…送信。」
マッチングアプリで送られてくるメッセージに全て返信をしていく。
ちょうど今がお花見の時期だからだろう。
送られてくるものはそのお誘い関連のものが多かった。
そもそも、どうしてこうも遠回しの言い方しかできないのか。
『相手から誘われた』というちっぽけプライドを保ちたいのか、
『断られないという自信がある』という下らない理由からか。
「てか、普通に考えて欲しいんだけどさ。
花見のお誘いって一番さくらが綺麗な時にいくから、
基本的にその週かその次の週に会うことが多い訳でしょ。
美容室やネイルの予約するのにも難しいし、
色々と準備するのに急に言われても困るのね。
第一そんな急に誘ってもOK出す暇な女って思われるのが
何よりむかつくんだよね。」
目の前にあるポテチをむさぼり、
イライラした口調でそう呟いた。
このアプリをして早3年が経つが、
まともな男に出会ったことがない。
プロポーズにしても何にしてもそうだが、
シンプルなのが一番なのだ。
『お花見行きませんか?』の一言。
たったこれだけがどうして言えないのか。
誰かと恋に落ちるのにプライドほど邪魔なものなんてない。
それからもメッセージは止まらない。
「興味ないです…送信。」
「ありえないです…送信。」
「そうですか一人でいってください…送信。」
あーあ。まともな男がいない。
どいつもこいつもくだらない。
桜という綺麗な花をお前の自尊心を満たすための道具にするな。
お花見という理由付けのために利用をするな。
スマホをソファに投げようとした瞬間。
また新着のメッセージが届く。
小さく舌打ちをして開くと、
珍しく少しだけいいなと思ってる人からのメッセージだった。
『お話していて、ぜひ一度お会いしてみたいなと思いました。
もしもご都合よろしければ、お時間のある時にお会いしませんか?』
私は思わず小さくガッツポーズをした。
そうそう。こういうのでいいんだよ。
ちゃんと相手にも気をつかえて、
他の何かを理由にしたりしない。
連絡が来て1分ですぐにメッセージを返した。
「他の人からも誘いが沢山来てるんですけど、
どうしようかな~…送信。」
ニコリと少し笑い、またポテチを食べ始める。
だってこういうのって、駆け引きが大切でしょ?
誘ったらすぐに行く軽い女だと思われたくないの。
だけどこれで、私のアプリ生活ももう少しで終わるかも知れない。
彼はきっと、未来の彼氏だ。
「来年の花見、楽しみだな~。」
私はポテチ片手に彼とのメッセージ欄に新しいメッセージが届くのを
ずっと凝視していた。
完
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