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伝説の人斬り抜刀斎。と言う異名はまさに刺客の為にある様なものだ。殺生戒を破る際にそれは元に戻ると天は言う。しかし、歩冠でも感じたが、覇魔巣然り、刺客と俺は一線を画す。ニャッシャ保蘇河の意図も同じだろう。「井家田正春(いけだまさはる)は知ってるな。あやつが元凶ぞな。賞金稼ぎを煽って、立場を固める猛者…猛者故に隙きは無し。イヤなら覇魔巣を出よ。」ニャッシャ保蘇河は覇魔巣に詳しい様だが、俺は井家田正春と言う猛者を知らない。どうしたものか…。「あっははっ!俺の首に懸賞金を掛けることの出来る人間が居るものか!巫山戯過ぎだ!所詮は骨ひらいぞ!」俺は黙さず、声を荒げた。「あっははっ!…っははっ…。その通り。猛者は猛者を呼ぶからな。生死に至るまでは問えんのよ。心しておけ!!」ニャッシャ保蘇河は頬を赤らめ、俺を突き飛ばして、走り去っていった。「ニャッシャが見逃した猛者か…難儀なりや。」俺の耳元に地鳴りのする声がけたたましく響いた。「いつまで伝説の人斬り抜刀斎で居る気だ?レフィル万江田。」声のする方を向いた途端に俺は突き飛ばされた。「その尻餅で手を打とう。レフィル万江田よ…。身の程を知れ…猛者なれど…お前は素人に手を出した。私は井家田正春。別名、覇魔巣の巨人だ。」甘ったるい臭いを放ち、その巨漢は丸坊主の顎髭野郎だった。生い茂る顎髭は濃く、俺は偉そうだと心底思っていた。「この袈裟は正装ぞ。」桔梗に染まった袈裟は目の覚めるようなものだった。
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