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願い事を伝えるべく上を見上げるが、桜の木の上にふわふわ浮いていたサクラは気がつけば明美の横に座っていた。
「おばさんってもしかして…」
明美に顔をぐっと近づけたサクラは囁いた。
「友達いないでしょ?」
「な、なぜ…それを…」
「その人に擬態?してると憑依したみたいに何故かその人間の考えてることとかわかっちゃうんだよねー。てか、頭の中読めなくてもだいたいわかっちゃうけどね。一人で夜中に花見なんてリア充じゃなかなかいないもんね。
で、願いは決めた?」
「リア充とか…なんでそんな言葉知ってんだっつの。まぁいいや…。
うん決めたよ。お察しのとおりわたしは友達がほぼいない。そこでだ…。」
明美はサクラの目を見る。
「あたしとまた来年ここで会って下さい!!お願いしまっす!」
なんか告白みたいになった。
内心ドキドキしながら明美はサクラの返事を待つ。
サクラは表情ひとつ変えずに言った。
「…わかった、いいよ。それが願いなら。でもおばさん、なんかそれすごくさみしくない?誰も話聞いてくれる人いないの?なんか可哀想だね…。」
「う、うっさいわ!ポツンと一本だけ咲いてる木に言われたないわ!寂しいのはお互い様でしょうよ!」
「はぁー?こちとら別に寂しくありませんけどー?木の手入れをしてくれる人間もいるしたまには鳥とかと話すし!寂しいおばさんと一緒にしないでくださいー!ふんっ。」
サクラが背中を向いてしまった。
明美はサクラの肩にちょこんと頭を乗せて言った。
「ねぇ、サクラちゃん、来年もまた会おうよ。そんでさ、こんなふうに一晩中おしゃべりして、つまみ買ってビール飲んでさ、お互いにこの一年で起きたこと話そうよ。きっと楽しいよ。」
すると次はサクラが明美の肩に頭を乗せて言った。
「…はいはい。わかりました。ていうかこんなくだらない願い事で使っていいの?またあたしに会いたいなんて言うのはおばさんくらいだよまったく…。変わってる。」
「そうかなぁ。」
「そうだよ!そりゃこんな変わってる人間はあたしくらいしか相手できないよ。しょうがないから来年また満開の夜ここにおいで。待ってるから。」
「うん。サクラまた会おうね。絶対会いに来る。もう友達だもんね。」
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