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「昔は遠い先の話だと思ってたな」
「何がです?」
「お前さんとこうやって酒を酌み交わせるようになる日が、だ」
あぁ、また始まった。
酔っぱらいとは、どうしてこんなにも昔話が好きなのか。
それとも、この天狗限定だろうか。
「また父親目線ですか」
「伯父貴目線でいるつもりだが?」
どっちでもいい。
どっちでもないし。
私は天狗の話を聞き流しながら、酒壺から盃に酒を注ぎ一息に酒を呷ってはまた酒を注いだ。
普段から酒を飲んでいても、美味しいと思うことは少ない。
今飲んでいる酒は私が唯一と言っていいほど美味しいと思える酒だ。時々雪女が持って来てくれる酒だが、作り方を教えてもらったことはない。
どこで作られたかも頑なに教えないところからして、案外人間が作った酒なんじゃないかと思ったりもする。
うちの母は人間嫌いだから明かさないのではないか、と。
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