りゅうみかの甘々♡ナイトを生配信!

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りゅうみかの甘々♡ナイトを生配信!

 四月八日、土曜日。午後七時。  白い壁にレースのカーテン、ローズの芳香剤。ところどころにエレガントな小物が映り込むアパートの一室。  ふわふわの白いソファーに座る俺の隣には、艶々の巻き髪を携えた美華(みか)が座っている。クリーム色のニットワンピースは、完璧なプロポーションを強調している。  俺はカメラのスイッチを入れた。そして、俺と美華の手を合わせてハートを作り、甘い微笑みをカメラに向ける。 「りゅうとー」 「みかのー」 「「らぶらぶ♡ちゃんねるー!」」  二人の声を合わせるのも慣れたものだ。俺はテーブルに置いてあるパソコンを横目で見る。 『あけみ:初生放送待ってたー!』 『kokoro1119:りゅうくんの顔面偏差値、今日も激高!』 『とんちゃーちゅん:みかちゃん美人すぎる……尊い……』  よしよし、順調だ。同接数もコメント数もどんどん伸びてる。  俺たちは顔を互いに向け合う。 「みかちゃん、今日は初めての生放送だから、特別なことをしようか」 「生放送で特別なこと? 緊張しちゃうな……初めてだからこそ、いつも通りのことをしない?」  口元を隠して上目遣いをする美華。台本通りの完璧な仕草だ。読者モデルを経験しているだけのことはある。 「そうだねー。それじゃあ、いつものカフェラテタイムにしよっか」  立ち上がってキッチンに向かう俺の後を、カメラを持った美華が着いてくる。  俺は食器棚を開けた。甘々カップルのルーティンのために。お揃いのマグカップを取り出して、俺がカフェラテを作る。愛くるしくはにかんでお礼を言う美華。…… 「あれ?」  美華が首を傾げた。俺の顔から血の気が引く。  確かにマグカップは入っていた。二つ。ひとつには「りゅう」と書かれている。もうひとつには……「れいな」?
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