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一方、仙花は何か妙な柔らかいものを踏んだと思った瞬間、ずるずると地底へと引きずり込まれてしまった。
何者かが仙花の足首をガッチリと捕まえ、強い力で引っ張っている。
スポンッ と地底の部屋の天井から下に落っこちた仙花を、生暖かい大きな動物がガシッと受け止めた。
まるで大きなペンギンなのに羽の先には人間の大きな手がついている。相撲取りみたいな図太い脚さえついている。
「キモッ! 私を放しなさいよ」
仙花は暴れてペンギンの化け物に厳しい口調でそう言うと、化け物は優しくそっと仙花を下に立たせた。
「あっ! 仙花! どうしてここへ来たんだ?」
ペンギンの化け物は仙花の顔をまじまじと見つめ、野太い声でそう言った。
「あんた、まさか、ゴリオなの?」
ゴリオは仙花のカレシの名前だ。
ペンギンの化け物は、少しオロオロしながら説明した。
「今はもうゴリオではない。魔女にゴリギンと名付けられた。ゴリオとペンギンが混ぜこぜになったから、名前も混ぜられたんだ。それより仙花はなぜ、こんなところへ来た?」
「決まってるでしょ。あんたに貸したお金を返してもらいに来たのよ。4万円。今すぐキッチリ返してちょうだい」
仙花は怯えるゴリギンに迫った。
「金なんかある訳ないじゃないか。この姿を見ればわかるだろう」
「じゃあ、仕方ない。金を返せないなら、その代わりに、あんたに頼みたいことがある。私、魔女になりたいの。あなたが口添えして、そのことを魔女に頼んでちょうだい」
「何だって?魔女になりたい?恐ろしい。前から仙花は怖い一面があったけど、まさかそこまで異常な人間だったとは・・・」
「ごちゃごちゃ言ってないで早く私を魔女のところへ連れて行って。そしてゴリギンのたっての頼みで私を魔女の弟子にしてほしいとお願いしてちょうだい」
仙花とゴリギンが、そんなやり取りをしていると・・・
お~っほっほっほ・・・ ふふふふふっ・・・
ゴリギンの巨体の向こうから、さっきの女の笑い声がする。
その声を聞いたゴリギンは、デカい図体のくせに、ビビッてどこかへ姿を消してしまった。
ゴリギンが姿を消すと、それまで薄暗かった地底の部屋はパアッと明るくなった。
「なかなか気持ちのしっかりしたお嬢さんだねぇ。ほほほほっ。あなたの会いたがっている魔女は、この私よ」
仙花が驚いて声のする方へ振り向くと、ゆずちゃんが話していた通り、スタイル抜群、お色気ムンムンな絶世の美女が、鋭い視線でこちらを見ているではないか。
イラスト by タナカネイビー氏
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