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氷雨が弾ける音がする。
ゴーグルを外すと真っ暗な視界が開け、代わりに無機質な白い部屋の壁が現れる。
ダイニングの食糧庫を開け積み重なった白い真空パックから一つを選び、細長いクッキーバーを取り出して口に運ぶ。
月に一度、離れたところにある会社から食糧の配達が来る。味に対して祖父の代から再三アンケートに文句を書いた甲斐もあり、最初の頃よりはずっとマシになったらしい。
この星では1日の半分氷雨が拭き荒び気温が0度を下回っている。楽しみといえばVR映像を観ること。例えばゴーグルをつけテーブル上の七色に光る水晶に向かって「空」というキーワードを言うと、自動的に映像が5感に繋がれ、青い空で風を感じ、爽やかな大気の匂いを嗅ぎながら空を飛ぶことができる。
朝の5時。
壁にかかった白い防護服を纏い二重扉のロックを解除し自宅である卵形のシェルターから外に出る。
外には卵形のシェルターが等間隔で100個ほど並んでコロニーを作っている。氷雨の中を駆け抜け、コロニー中央の宇宙船を模した楕円形の巨大なハウスに入る。
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