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土に植えられた苗木の様子を見ていると自動ドアが開き、クラスメイトの元太と皐月が入ってきた。
「いい加減やめろよ、春樹」と元太が力なく言った。
「そうだよ、桜なんて咲くわけないんだし」
皐月も続いた。
2人はこの計画に否定的だ。日本政府が過酷な労働を強いているためにこの星の人々がエネルギーを費やし寿命を縮めていることに、怒りをおぼえているみたいだ。
「政府は無茶振りするだけして、自分らは何もしない。花なんかのために人を殺して平気な顔してる。もう終わりにしたい。全部無駄なんだよ」
皐月の目に涙が浮かんでいた。
「無駄なんかじゃないよ、祖父ちゃんや父さん達がやってたことは……」
「結果出せてねぇなら無駄だ」
僕の言葉を元太が遮った。
「下らねぇ夢なんか捨てて遊ぼうぜ。こんなことに歳月費やして何になる? 俺らどうせすぐ死んじまうんだぞ。こんなクソみたいな仕事放り出して、楽しまなきゃ損だろ」
元太の言葉に胸が痛んだ。全てを否定されたみたいで悲しかったし、何も言い返せないのが悔しかった。
「やるしかないんだ、僕達にはそれしか残されていないんだから」
僕の台詞に元太はため息をつき、皐月は鼻で笑った。
去っていく二人の後ろ姿を見つめながら、僕は涙を拭った。
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