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それからと言うものの、私達は狭い帳の中で密な逢瀬を重ねた。ソウちゃんは次期当主として、大事大事に育てられていたから。親の許可無しに外へ出ることは愚か、学校で友達ひとり作るのも親の干渉は避けられず──
『ちょっと金持ちだからって意気がりやがってよ!』
『今日はイモムシとヨモギの春巻きでーす。はぁ〜い、ソウちゃん。ママが美味しく食べさせてあげる。ほら、あーんは?』
たまたま、当主様の目を掻い潜って迎えに行った学校。ソウちゃんはそこで、同級生の子達に囲まれて酷い目に合わされていたわぁ。
泣きもせず、理不尽な暴力に耐える姿はまるで感情絶無のお人形。羽交い締めにされて、雑草に丸められた芋虫を口に入れられて嘔吐する姿は見るに堪えなかった。
──怖い。ソウちゃんをそうやって迫害する子供達より、私はソウちゃんの抱く闇の深さに背筋が凍ったのを今でも覚えてる。
『いーち、にぃ、さーん……』
立ち上がり、子供達を指差し数える顔に表情は浮かばなかった。その姿が不気味で仕方がなくて、『私のソウちゃんにやめなさいよ!』なんて……私は出る幕を見失ったわぁ。
その時、ひとりの体格がいい男の子がね、ソウちゃんに『意味わかんねぇんだよ』って掴みかかろうとしたの。
刹那、間欠泉の如く真っ赤な血飛沫が辺りに飛び散って、指がぴくりとも動かなくなった腕がひとつ。虚しい音を立て、雑草に寝転がったのよぉ。
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