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『六段……まだまだ遠いなぁ』
『ぎゃぁぁあああっ!! 手がっ……オレのうでがああッ!!』
『い、いやぁッ……! せっ、先生たす──』
『あの空に触れる……俺は永遠をあの青に飾る。その為に、手っ取り早く夢を掴まなきゃならない』
お前等は所詮、その贄──踏み台なんだよ。
無惨に天へと飛ばされた女の子の首。眩しい日差し、雲がゆらゆらと流れる青い空。そこに翳された小さなナイフは赤黒に輝いていた。
『土の味って知ってる? カブト虫の幼虫ってさ、それをゼリーに凝縮させたような同じ味がするんだよ。お前達に食わされるワケの分からない幼虫より、よっぽどマズくて未だ慣れなくてさ』
私は怯えて、その場で腰を抜かしたわ。だって、ソウちゃんが余りにも平然と子供達を切り刻んでいたから………なんの躊躇も、無駄もない。ただ淡々と、感情も出さずに──鋭利で冷たいばかりの小さな刃で、人を殺していたから。
『──ミナ』
『へっ……』
『迎えに来てくれた所、申し訳ないんだけどさ……急いで、父さんを呼んで来てくれる?』
──それと地下の古井戸、開けておいてって。
草木を掻き分け、私に手を差し伸べてくれたソウちゃんは──驚く程にいつもと変わらない。優しくて、聡明さを隠さない、生意気な笑顔を浮かべた彼だったわ。
そこに、殺人鬼を生業としたような冷酷さや所作なんて微塵も浮かばない。ソウちゃんは優しい、私の初恋のソウちゃんそのもの。
だから、私は恐怖に襲われて──もっと、ソウちゃんを大好きになった。初めて、こんなに人を愛おしいと思えたの。
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