憂鬱が融解するばかりの空を見上げて【夜明けが見せた虚空(後)】

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憂鬱が融解するばかりの空を見上げて【夜明けが見せた虚空(後)】

「──なんて、ね……」  仕事終わりの明け方、乱れた浴衣姿もそのままに外へと出た。木々を揺らがす風は少し冷たくて、心做しか蛍達の浮遊力も弱まっている気がする。 「酷く虚しい夜明けだわぁ……」  何気なく見上げた空は正に空っぽで、まるで今の私みたいじゃないと自嘲が込み上げた。鈍色で薄暗いばかりで、遠く果てに沈む朱色がぼやけて映り── (嗚呼……それは私が泣いているからなのねぇ)  なんで、こんなに胸ばかりか全部が痛いのでしょう?  今は過去ばかりか、昨日すら重たいばかりで──今更、身体に嫌というほど染み付き、歪んだばかりの愛欲を根底から覆すなんて真似、私には出来やしないのよ。  だって、弱虫なんだもん。死にたいばっかりの、生きたがり。ワガママで、臆病で、だから心は純粋であることを拒んで、拒み続けて──いつしか外側ばかりが大人になった、惨め極まりない少女なんだもん。 「あぃたいッ……会いだいよぉッ、ソウちゃあんッ」  こんな一人ぼっち、もう嫌だ。  都合のいい女、人形、性具、道具──そんなの、もう嫌なんだと心ばかりが叫んで、止まらないの。  肉体の求め合い、それによる駆け引きが愛の証明だなんて馬鹿げてる。今ある現実に整合性をつけたり、取り繕うのも限界なんだ。
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