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「──それはどのソウちゃん?」
「ふぇっ……?」
跪いた背を覆い隠すように羽織らされた黒のジャケット。鼻を微かに擽る匂いは、どこか爽やかで、暖かくて──
「これ、白夜ちゃんのぉ……?」
「そう……私のお守り。ばる君と出会った時にもらって……王理に捨てられたりしたら嫌だから、本当にひとり寝の時以外着てないジャケット」
──ばる君の匂いが消えるのも嫌だしね。
隣にしゃがみ込み、私の頭を撫でる白夜ちゃんの横顔は気強くも優しくも見えた。
「それより、先に質問したのは私の方」
ふと肩へと乗っかって来た重み。ぎゅうっと繋がれた手から伝わる温もりに、漠然とした孤独感が溶けていくの。
「ソウちゃんが誰かって話?」
「うん。ミナギを捨てたソウちゃんじゃないことだけは、何となくだけど伝わったかな」
「じゃあ、答え見えてるんじゃない。白夜ちゃんのバカ」
意地らしく握り返した手。白夜ちゃんは「へへっ」と得意気に笑うだけで、それ以上の追求はして来る様子もなく──訪れた沈黙。空虚が漂い、私達は心ここにあらずで、ぼんやりとした陽の輪郭を眺めることしか出来ずに……
「こうして見るとキレイよねぇん、朝焼けって」
「ん……そうだね。私達が本来戻るべき場所を教えてくれてる気がするよ」
「あらあら……おセンチ白夜ちゃん。いきなりなぁに?」
「今まで恋煩いで泣いてたミナギにだけは、おセンチとか言われたくないな」
「──ふふっ」「──ははっ」
涙が枯れ、代わりに零した笑声。私達は、シンクロしたように笑い合う。純粋無垢な笑顔で、互いに抱えた解消しようのない孤独感を埋め合わせ、慰め合うように──
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