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「嘘や冗談は言ってるつもりないんだけどね」
「あら、そうなのぉ?」
「うん。日向は、本来の私達に在るべき場所──」
朝陽は、私の帰りたい場所だ。
神妙に空へと伸ばされた、白夜ちゃんの手。指先まで流れる視線の先、そこには鈍色を鉛丹色で染めたグラデーションの空が広がっていた。
「ふふっ……私達が舞う夜の景色──幻想は、どこまでも虚空だったと言う訳ねぇ」
「そう……陽向でも日陰でもない夜の景色は、暗くて、寂しくて、孤独感や寂寥感ばかりを増幅させる……澱む現実を焚き付けてくる、悲しい景色──」
「でもね……」と、白夜ちゃんは振り切ったように私を見つめてくれた。そこに咲くまだるい笑顔は、今までのどの白夜ちゃんより明るくて、優しくて、暖かくて、なんの飾りっけもなくて──そして、どこまでも悲しかった。
「だからお月様が寄り添ってくれて、蛍が道を照らしてくれるんだよ。夜明けへと辿り着く道を間違えないように、私達をいつも、いつでも見守ってくれてる……
孤独でしかない景色を幻想で満たして、夜明けへと導いてくれるんだ」
──その点、私達はきっと……導き方を忘れちゃったダメ蛍なんだろうね。
悲しい笑顔の理由が最後の台詞に全て凝縮されていた気がする。
不意に零れた涙と、溢した愛。白夜ちゃんを思わず抱きしめた、その先、
「ミナギの愛はずっと、彩り豊かだなって思ってた……」
ぎゅっと抱き返されて、言葉を見失う。思考が戸惑う。
嗚呼、どうしてでしょう? どうして、こんなにも触れ合い、確かな温度があると言うのに──白夜ちゃんが遠く在る人に感じてしまうのは──
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