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「──黒子から聞いたよ。あのタチ悪くて有名な山賊の相手を、自ら相手すると言い切ったって」
余りにも真剣な白夜ちゃんの眼差し。そこに虚勢は通用しないと、直感が身体を震わせた。
「まだ夢見がち乙女のなっちゃんに、アレの相手は耐えられないと思ったのよぉ……」
「そっか……ミナギは渚を庇ったんだね」
実はアナタもよ、なんて口が裂けても言えずに。私は押し黙って間を繋げるしか出来なくて……
呆然と陽を見つめる青い瞳。見ているだけで、息苦しくてどうにかなってしまいそう。
王理さんはアナタを売ろうとしていたなんて、そんな白夜ちゃんを壊すような真実──言える筈が無いでしょう?
「私が代わるよ」
「へっ……」
「私がその人達の相手をする。だから──」
ミナギはもう、踏ん張っちゃダメだよ。
穢れがない笑顔が見られたのは一瞬。拒否を声にする前に、暗転した視界。そんな黒は濁り濁って、白夜ちゃんの鼓動音が私の咽びを掻き消した。
「私ばかり甘い蜜を吸って生き延びる位なら、それこそ死んだ方がマシ」
「っ、だめ……白夜ちゃん、アイツらはぁッ……」
「大丈夫」
それこそ、強がりでしょう? そんな反抗心は無邪気な笑顔に崩された。
ダメなのに呑まれていく。この子はこんな明快じゃなかった筈なのに、今はお日様のように優しくて、暖かくて、眩しくて、穢れた空気をみるみる消し去っていくような強さを放っていたから。
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