6人が本棚に入れています
本棚に追加
「所詮、人の子に妾の本懐は理解出来ぬと言うのかッ……!」
どんなに刹那を重ねても、結局人間には欲望や意思があり、それに勝るものはないのだと教えられて──化物と呼ばれた少女はひとり、涙する。
(これでは、遠い過去をまた繰り返すだけだ……)
孤独な自分を慰めるように、身を竦めて抱いた肩。
生まれたその時、その瞬間から、自分は他の螢火とは違った存在だった。
それが、何故かは分からない。目の前にあるのは、見るも無惨な屍の山。そのどれもが、年端もいかない少年少女達。それを憂うように舞い、息絶えていく蛍達──それは、死ぬに死にきれず未練を彷徨う子供達の魂にも見えた。
こんな所には居たくない。ああはなりたくない。だから蛍火は子供達の幸福な輪廻を願い、この山を穢し、荒らし尽くす人間達を憎んだ。
どんなに鼻を覆い隠しても、吐き気を催すような腐臭が辺りに漂い──その内、野犬などの害獣が増え、死体荒らしや自殺志願者までもが集まるようになった。
そればかりではない。そんな負の一方を辿る環境に乗じて、子を捨てる親が急増した。いつしかこの山は、姥捨山を準えて子墓山と揶揄されるようになった。
こうなった根本の原因はなんだ、と……蛍火は考え、苦悩した。
彼女には死の概念がない代わりに、人魂を食らう術が身についていたから。
(希望とはなんだ……? 家族、母親とは──)
魂を貪る中で、次第に人間が何たるかを理解し始めた少女。その内、それらしい感性が芽生えた。感情が生まれたのだ。だからこその人間に対する失望は、憎悪心を膨張させるばかりだった。
最初のコメントを投稿しよう!