憂鬱が融解するばかりの空を見上げて【夜明けが見せた虚空(後)】

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「帰ろう」  力強く引かれた手。私はと言うと、子供のように泣きじゃくり、涙を拭うことが精一杯で何も言葉を繋げなかった。  心はありがとうと叫んでいるのに、それを声にしたら肯定を意にしてしまう気がしてならないから。痛い位に唇を噛み締めて、耐えるの。 「ねぇ、ミナギ──」  失くした過去に縋りながら夜明けを迎えても、お日様はきっと喜んでくれないよね?  振り切ったような白夜ちゃんの笑顔は、虚勢にも気丈にも見えた。  突然過ぎる問い掛けに言葉ばかりか、思考も詰まる。  精々肌で感じ取れのたは、白夜ちゃんも未だ葛藤の中にいて、悩み堕ちていると言うこと。だから、上手い答えが見つからずに逸らした視線。 「幻想が陽に燃やされる日は来る……いつか、きっと──その時、ミナギや渚は笑顔で始まりを迎えていますように」  まるで他人行儀で、空虚を隠さない台詞。白夜ちゃんは慈愛に満ちた微笑で呟いた。  切情や寂寥感が漂い始めた私達の距離。それでも、白夜ちゃんの尊さばかりが胸を焦がすから。 「何言ってるのよぉ〜……Day Breakは勿論アナタも一緒よ、白夜ちゃん」  私達は死ぬまでさんこいちなんだから!!  思い切り抱き締めて、満たされることのない愛を溢す。  その時の虚ろな白夜ちゃんの微笑──私は一生、忘れることは無いでしょう。
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