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『──俺を山に埋める気っすか?』
『は?』
かれこれ数時間前の話。力帆に黙って俺についてこいと胸ぐらを引かれた先、待ち受けていたのは空気が鉄球の如く重たいばかりの光景。
『それとも海に沈められる感じなのかな~? はははっ』
『テメェごときにそんなしちめんどくせぇことするかよ。さっさと乗れや』
不良チックな改造を施されたを真っ赤なスポーツカー。雷鳴のような爆音を轟かせたエンジン音が、純真の心臓を捻り上げたのは言うまでもなく。
『すみません。乗りたくないです……』
『そんな選択肢がお前にあると思ってんのか?』
力帆の舌打ち混じりの威圧。ただでさえ釣り上がった目が鋭く純真を睨み上げる。
『さっきの威勢は虚勢かよ? 見切り発車で俺に盾突いたってんなら、それなりのペナルティは受けてもらうぞ』
『虚勢じゃありません。ただ俺は貴方と白夜さんの話がしたいと言っただけで、ドライブしようなんて──ぐふっ』
間髪入れずに食らった腹蹴り。純真が涙目で咳き込む中、思い切り閉められたドア。こんな強制乗車、拉致と変わらないと彼は怯えた子犬に成り下がるしか無かった。
『せっ、せめて目的地位は教えてくださいよ……』
『論より証拠。それだけよ』
『答えになってませんけどっ……?』
『コイツの車、わりと便利な物が積まれてるのよな』
『はい?』
瞬速でダッシュボードから取り出された物。純真がそれを視認出来た際には、バチバチッとした音が鳴り響き、青白い光が明滅を繰り返していた。
『奴のことだ。当たり所が悪けりゃ死ぬ程度に電圧はいじってるだろうな』
『すみませんでした』
無表情を一切崩さない脅迫。冗談なのか、本気なのか……純真は全く判別がつかず、すぐに降伏を意にして頭を下げた。
(スタンガンで脅迫なんて、まるで逃げ場がない……)
気が遠くなるばかりの夜空を見つつ、現実逃避したい一心で探し星を数え始める。そんな純真に目もくれず、力帆はアクセル全開で車を発進させたのだった。
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