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腐臭と森林の香りが混ざり、死臭しか漂わない山。正に絶望の果てにある世界。
「ぉかあさんっ……おかぁさん……」
こんな光景はとうの昔に見飽きた。それでも、蛍火はこれぞ宿命と言わんばかりに出会ってしまうのだ。
花の蕾を枯らさないように、か細く息をする子供達と──
(泣くな。すぐ楽になる)
人の魂に刻まれた記憶の欠片──温情を理解したいから。またも、痩せこけて傷だらけになった人間に触れる。虫けら程度の小さな光で、少女の大きな絶望を照らす。
「ぇふっ……ぁりがと……」
小さな手のひらに撫でられて、羽を鳴らす。すると、少女が小さく笑った。自分に、確かな言葉を紡いだのだ。
「ほたるさんは、ここにいるどのホタルともちがうみたい……おはなしができるんだね」
(なに……? 妾の言葉が聞こえているのか?)
「──きこえてるよ」
『なんだと……?』
少女は優しく朗らかに笑った。驚く暇もなく、暗闇に閉ざされた蛍火の視界。
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