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「あなたみたいなホタルを何度も見たの。ホタルはみんなね、ここにいる子たちにやさしくよりそうのよ。そしたらみんな、やすらかにねむりについて……目をさまさない。まるで死んじゃったかのように」
──あなたは、しにがみさんかな? それともてんしさん?
ぱぁっと開かれた手。蛍火の目には、死期に囚われて尚、慈愛深く微笑む少女がいる。
『違うっ……そのどちらでもない。妾は、わらわは──』
正体を看破されたと言うのに、化物だ。なんて言えなくて。閉ざした声。
初めて会話が出来たと言う人間なのに……蛍火には少女の死期が見え、それが空腹を誘うのだから歯痒いばかりだ。
『ねぇ、ほたるさん……すこしでいいんだ』
わたしと、おはなししてて?
そんな蛍火の心境とは裏腹に、少女はあどけなく笑うばかり。
『──それならば、聞かせろ。人の子とはっ……人間とは何だ?』
そんな余りにも莫大且つ、世界の真理をつっつくような質問。少女は少しおどけたように聞き入れて、そして──
「じゃあ、おはなしはそれで決まり! それをいっしょにかんがえよっか」
まるで、生まれたての子供のようなまっさらな笑顔で応えてくれた。
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