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「ただいまー」 「お帰り、なんだミッキーじゃん」 「なんだとは何だよー」 おばあちゃんからいただいて物を下してくれている間に母の遺影のある部屋に入ると、そこには銀色の段ボールの祭壇が。 「暇だから作った」 頭に手をのせ恥ずかしそうに言う弟。 そこに彼が来てへーなんて言う。 「なあ、これ逆じゃないか?」 「え?どこ?」 おばあちゃんに聞いてきたのは、お盆の始まる日なんか。遅いよりは早いほうがいい、今日からでもいいと言われた飾りつけ。 やろうとしていたのに、弟もどこからか聞いてきたのだろう。 父が帰ってきたびっくりするかもしれないけど、またさみしくなっちゃうかもな。 お母さん、彼氏ができました、お母さんもよく知っている人だよ。 お化けでも幽霊でもいいから、出てきてほしいと思う。 「げ、ピーマン」 「仲間がいたー、見ろ、こっち」 「うっ、しし唐、なんでー?」 「黙って食え!食わないのなら、毎日出してやる」 「勘弁してー」 「よかった、俺ここの子じゃなくて」 「あら?ふーん、彼女じゃあなくていいんだー」 「え?何で?それとこれとはー?」 「何?二人付き合ってんの!まじで!ウソ―!」 ただいまー、父さんが帰ってきた。 「親父―!大変、大変!」 「ちょっとー!」 「いいんじゃね?」 「もう!」 この後にぎやかな夜になるのでした。 ねえ、初めて出会った日にさー。 何か言った? 十月一日、彼は、寮へ引っ越してきました。 私は手伝いながら、あの日何が秘密だったのか、思い出せないでいたことを話しました。 「なんだったかなー?」 彼も忘れているようです。 あの後玉ねぎの処理に困った話をすると、 「玉ねぎ?玉ねぎ?あー、もしかして」 「もしかして?」 花が、俺のことじーっと見るからさ。 「お忍びで来てる芸能人なんだ、秘密だよ、誰にも言わないでね。って言ったらさー、花、うん、うんって、それぐらいかな?何で今頃?」 「え?いや、なんとなく」 忘れていた、こいつは、顔がいいということを自覚しているんだった。なんだか急に恥ずかしくなってきてしまった。 「どうした?疲れた?」 「大丈夫」 「顔、赤い、熱でも出たか?明日学校!」 慌てる彼、大丈夫だから。 そうか? ふっ、フフフ。 なんだよー。 何でもない。 その後しばらく笑いが止まらなかった。 お母さん、私、笑えるようになったよ。 彼と出会えてよかった。 ありがとう。 「ありがとう」 「へ?なに?」と間抜けな声の彼。 「なんでもなーい」 エーなんだよー。 何でもないってば―。 お母さん、私、好きな人ができました。
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