2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「姉ちゃん熱でもあるの、ゲッ、何この玉ねぎの山?」 玉ねぎはもらった話をした。 「なんか入ってる、名刺?英語か?違うなー?みきお?かみさき?」 その名刺をのぞいた。 「お父さんのに似てない?」 会社のマーク、それと色。 「アー部署によってデザインが違うらしいけど」 「オー、マジか、海外支局とか!すげー!」 ?が頭をよぎった。 秘密だよ、誰にも言わないでね。って言ったよな?あれってどういうこと? その夜、大量の玉ねぎを使ったカレーライスとなった。 目覚まし時計は母の思い出。 オーブントースターは、父と母が若かりし頃から使っていた物。 「寿命なんだなー」 それが胸にいたかった。 弟が、それはそうと言って差し出した名刺。 「ん?イギリス?なんでこんなもの」 「姉ちゃんがもらった玉ねぎに入ってた」 「は?」 実はと朝の出来事を話した。 「へー、じゃあ、この人は、うちの職場に来たのかもな」 「あれ?同じ会社でしょ?会わないの?」 工場と技術者たちは敷地の中でも違う場所で、大きな高層ビルで働いている、頭のいい人たちだという。 「そうなんだー」 「部署が違うとねー?親父も母ちゃんも違ったもんな」 でもなんで?が頭に浮かぶ。 「秘密だよ、誰にも言わないでね。って言われたんだよねー」とつぶやいた。 「なにそれ、おかわり」と皿を私のほうに押す弟。 「自分でしろ、おかしいと思わない?秘密って何?」 さあなーと裏返しながら、名刺を見ている父。 「まあ、この町にくりゃ、多くがうちの会社関係だ、いいんじゃないのか?俺もおかわり」 はい、はい。と席を立ち、カレーのおかわりを置いた。 「ものすごい美形でさ、イケメンってこういう人の事いうんだーと思った」 「美形!」「イケメン!」 なぜか男二人の声がそろった。 「姉ちゃん頼むから、男作らないでくれ!」 はあ? 「まだ嫁にはやらん!」 あのねー。 ごちそうさまという声の後。 「絶対、男、ダメ!」とおおきなバッテンを作り、風呂!といって立ち上がった父。 私は大きなため息をつくしかなかった。 自分だって、母さんと付き合ったの高校生の時じゃん。 片付けるとそこにある食器類は四つずつ。母のものはまだ捨てられないでいた。 親戚たちに渡した母の遺品。でも、それは全部ではない。 毎日は、まだ母がどこかにいるようで、まだ実感がない。 父は、あれから急に老けたような気がした。 お酒も控え、付き合いと言って外に出ることがなくなり、私たちと一緒に夕ご飯を食べるようになった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!