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「へー、大学かー、お母さんも行ってみたかったなー」 貧乏で、高校がやっと、お父さんといろんなところへ行って視野を広げたという母の顔はとてもうれしそうな顔をしていた。 五人兄弟の末。上の兄二人は大学に行かせようと躍起になる祖父。その代り、女は勉強より仕事。どうせ結婚して家を出るのだから、学校へ行ってなんになるという。一番上のお姉さんは、そんな家が嫌でいつかず、その下は、お金を出してくれなくても自力で学校へ行くという、そんな兄弟はいつも嫌なことを一番下の妹に押し付けていたという。 だから世間を知らない、テレビさえ見る時間がなくて友達とも話は合うことはなかった。 それを見かねた父が、いろんなことを教えてくれたという。 昭和だよね。 もう平成になろうとしていたのに、不思議でしょう?でも、そんな家庭もあったのよ。 母はそのおかげで、料理がうまくなったし、こうして私たち子どもにも恵まれたという。 四人の兄弟は離婚と独身。子供はいるが、手放した。 「ざま―見ろじゃん」と私が言うと、「さみしい人生よね」という母の横顔を思い出していた。 「別に進学しなくても、死ぬときは死ぬ、幸せは、どこに転がっているかわかんない」 いまだに母の面影を追いかけている自分。 どうにもならない感情は、涙になり、布団をかぶって大声で泣いたのだった。 彼、神崎さんはその後も何度か父さんが連れてきた。 父はまるでもう一人子供ができたように楽しそうにお酒を進めている。 でも私はなんだか嫌で、その場から姿を消した。 「花ちゃん」と声をかけられ手も、父の手前無視はしなかったけど、彼と話す気にはなれなかった。
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