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コンペ惨敗
レンジさんと『必勝祈願』の為にカツカレーを食べた。
「必勝祈願?有難いねぇ〜!ウチの食事にそんな選択肢をしてくれるとは!!」
オーナーはそう言って、ラッシーをオマケしてくれた。
そんなご機嫌な週末を過ごしてからの、月曜日。
コンペの結果は、惨敗だった。
新人職員の教育係をしていた。
通常業務も並行して行っていた。
いくらでも言い訳はある。
でも結局は実力不足。
なのに、頭には言い訳がたくさん溢れる程に湧いてくる。
『結果、分かったら教えて』
レンジさんの言葉が頭に蘇り、メッセージアプリで『ダメでした』と一言だけ送った。
「…悔しい…」
職場で泣く訳にはいかない。
だから、レンジさんからの返信は見なかった。
必死に感情を押し殺して、仕事を終えた。
◇◇◇◇◇◇
帰路に着き、職場のある繁華街を歩く。
気分的に足早に歩く気にはならず、トボトボと歩く。
本当ならば、レンジさんからの返信を見なければいけない。
だけど家に帰ってから見ようと思った。
家でなら、泣いても大丈夫だと思ったからだ。
もうすぐ地下鉄の駅。
そこで見慣れた男性の姿を見た。
「…レンジさん…」
そこにはレンジさんがいた。
但し、レンジさんと共に華やかな女性がいた。レンジさんの腕に抱き着いて歩く女性。
そして驚いた。
レンジさんに彼女がいる気配は無かった。
だけど驚いた事は、それでは無い。
驚いたのは、今日帰ったら私はレンジさんに慰めてもらえると思っていた事にだ。
彼女でもない、顔見知りの存在でしかない私。
なのに、慰めてもらえるのが当然と思っていたのか。
そして、レンジさんに彼女がいるなら、これから私は、レンジさんのお家にお邪魔することは遠慮しなくてはいけない。
優満は、これ以上レンジさんを見ないように俯き、地下鉄の入口の階段を降りていった。
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