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引越しトラブル
先ず、今日は引越しだと言うのに大雨だ。
この時点で災難だけど、更なる災難に遭遇しています。
正に今。
◇◇◇◇◇
広告代理店勤務の25歳。
稲箸 優満。
一昨日、同棲していた彼氏に家を追い出されました。
先ず、これがおかしい。
絶対必要だった書類を自宅に忘れ、大慌てで帰ってみると、ベッドの上で彼氏と何処ぞの女性だかが『組んず解れず』状態。
そこは良い。
いや、良くないが、既に惰性で同棲が続いていた所もあった。
自分の事を棚に上げ、罵ってくる彼に対して氷点下まで『愛』とやらが冷めた。
しかし罵られれば喧嘩になる。
『出ていけ!!』と言われ、『出て行ってやるわよ!』と返した後、しまったと思っても後の祭り。
しかしこうなってみれば、意地でも出て行く。
即日入居の物件を発見し、即契約。
そして荷物を搬入していたのが、今日だ。
大雨。
潤沢と言える程の預貯金は、私には無かった。
なので、自分で運べる荷物は自分で運ぶ。
職場の優しいおじちゃん上司が、『社用車を引越しに使っても良いよ』と許可してくれたので、自分で買ったテレビやレンジは自力で運ぶ。
ちなみに、冷蔵庫や洗濯機は引越し業者に依頼した。
まぁ、つまり、彼氏の家の家電の殆どは私が買い、現在、彼氏のマンションには元々備え付けのエアコンと照明、そして『組んず解れず』ベッドが残されたという訳だ。
ざまぁみろ。
思い出すと少しすっとした事は、今度友達に話そうと思う。
それはさておき。
最初の災難は、彼氏の浮気と居住地を無くした事。
次は、自力の引越しなのに大雨な事。
三つ目。
私の引っ越したアパートは、三階建ての階段しか無い所。
しかも借りた部屋は三階。
その時、私は必死になって電子レンジを運んでいた。
そして、自分の部屋まであと少しという所に差し掛かった。
その時、自分の部屋の、隣の部屋の扉が開いた。
そして中から、少し背の高い女性が飛び出てきた。
「もう知らない!!」
そう叫びながら飛び出した女性は、派手に私にぶつかった。
「うわぁっっ!!」
叫び声を上げた私を省みることも無く、女性は走り抜けていく。
そして私は、廊下の手すりに身体を打ち付けた。
そして恐ろしい事に、手にしていた電子レンジが空を舞った。
「ヒィッ!!」
既にレンジは空を飛んでいた。
女性が飛び出してきた部屋の住人も、今の状況を見て飛び出してきた。
そして二人で手摺りを握り、レンジの行く末を見守る事になった。
結局レンジは、幸か不幸か自転車置き場の屋根に落下した。
しかしどう見ても、今後使えるとは思えない。
災難の数々に、私はやるせない怒りを覚えた。
そして隣りに立つ、やたらと背の高い男性に叫んだ。
「私のレンジ!!返してよ!!私の生命維持の頼みの綱なのにぃ〜っ!!」
隣に立つ男性は、私を見て目を眇めつつ言った。
「…は?…意味分かんねぇ」
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