サラマンダー広田

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 一九十センチを越える巨体。甚兵衛から伸びた丸太のような腕には無数の傷跡があり、胡坐を掻いた脛には子供用のバット程もありそうな傷跡が見えた。 「拓斗くん、遥々来てくれてありがとうな。彩夏が世話になってるね」  散々ビビってしまったけれど、いざ話してみるとサラマンダー広田こと義徳さんはヒールの印象とは真反対で、物腰が柔らかくてとてもおおらかな人だった。  だけど、彼女のお母さんからどうぞどうぞと勧められた酒を呑むスピードは尋常じゃなかった。この辺はさすがレスラーだと思わざるを得なかった。 「自分で言うのもアレだけど、彩夏は本当に俺のことが大好きな娘でさ、巡業に行く時なんかは「いやだ~」っていつまでも泣いちゃって泣いちゃって……そんな大好きなオヤジがテレビで暴力沙汰起こしてるなんて知ったらよ、娘に嫌われるんじゃないかと思ってさ。それで、覆面被るようになったんだよ」  酔いが回ると義徳さんは饒舌になってそう話してくれた。
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