眠りにつく時。

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ハッと目を覚ますと、ひんやりとしたレジャーシートの感触が頬を掠める。 「先輩、やっと起きたんですか?」 「……え?」 体を起こすと、少し心配そうな顔をした後輩が視界に入る。ああそうだ……今日は大学のサークルでお花見に来ていたんだっけ。 「先輩バイトのシフト入れ過ぎなんですよ。学生の本分は学業ですからね。全然飲んでないのに急に寝ちゃうから心配しました」 「ああ、ごめん、ちょっとトイレ」 何だろう、夢をみていた気がする。 とても、とても大事な夢。 「あ、場所分かります?」 「うん、大丈夫」 フラフラとお花見会場を出て、少し歩くとそこには立派な桜の木があった。 「……綺麗」 ポツリと呟いた言葉を風がさらっていく。そっと幹に触れた時。 「久しいな、人の子」 「……」 この世のものとは思えない程美しい人が立っていた。心臓が鷲掴みされたように目を離す事が出来ない。 「名を、お伺いしても?」 今度は、眠ったりしないから。 美しい人は目を細めて微笑んだ。 【完】
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