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「子爵令嬢クリティア・フローレン! 僕はこちらの伯爵令嬢ミラ・ミーティアと婚約する。君との婚約は今日を持って終わりだ。僕とミラの仲を割かないでくれっ!!!!」
コミケから脱走してきたみたいなファンタジーコスプレ衣装のあんちゃんが、私を指差しながら宣言した。
困惑顔をした、金髪碧眼美少女の肩を抱いている。
「クリティア、僕がミラと話そうとするたびに君は止めに入ってきた。それも今日までさ。僕とミラの愛は誰にも止められないんだ!」
誰だこいつ。
私は栗田玲奈。35歳。
クリティカルなんちゃらという名前じゃない。
ついでに言うなら金なし胸なし彼氏なしの三拍子揃った干物だ。
風呂あがりに梅チューハイとカルパスで腹を満たして野球を見る。
休日は食料買う以外昼近くまで寝てる。
そんなキングオブ干物の私が誰と婚約していたと言うのだろうか。
よく見ると私もファンタジーなドレスを着ている。頭にはドリル。
………………最近よく聞く悪役令嬢転生ってやつかしら?
マンガ読まねぇゲームもしない、最近買った本はロト6必勝法。
その手のマンガやゲームの知識はからっきし。
隣のデスクの若い子が、休憩時間にその手のウェブ漫画を読んでるくらいだ。
で、たぶん私は今ピンチなのか。
追放されるか処刑されるかが定番って言ってたけどさ、悪役令嬢のアマチュア小説だけで2万作品はあるって聞いたんだよ。
マンガやゲームやアニメ含めたらもっと数行く。
小説やマンガを読む趣味もないしゲームもしないからわからない。
……どっかの作品に転生したとして、私はどこの世界のクリティアさんなんだ。
普通こういうのって、ゲームやりこんで愛着湧いてる女子あたりが転生してくるんじゃないの?
なんで1ミクロンも関心のなかった私。
転生してから今日までの記憶が頭の中に入ってくるというメタ展開を期待してみたけれど何も思い出せない。
さっきから逢瀬を邪魔するなみたいなこと言ってるけど、この人が本当に私の婚約者だったなら、浮気しそうな男を止めるのは当然よね。
しかし元婚約者いわく、私は愛し合う恋人たちを引き裂く悪女。
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