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後編
俺とミズキの足取りは重く。サエたちからだいぶ遅れて体育館裏に着く。すると既にサエとイーチが2人で何か喋っていた。どうやら告白という戦は既に始まっていたらしい。二人の取り巻き連中が、少し離れたところで様子を伺っていた。大将同士の対決を見守る、それぞれの兵士たちと言った趣だ。
ちなみにイーチの取り巻きは、イーチと同じバスケ部のスポーツ特待生たちだから、皆大きくてガタイが良い。同じ高校生には思えない。少し怖い。
イーチはサエと話しながら、俺とミズキに気がつく。
イーチがミズキを見て言う。
「何だよ。ミズキさんは、俺に振られたからって、俺が告られてるの見にきたの?」
サエがミズキをガン見する。
「イーチに、ミズキが振られた?」
サエがミズキに尋ねる。
「それはつまり、イーチにミズキが告白したってこと?」
ミズキが困ったように言う。
「告白なんてしてないよ」
イーチが笑顔で言う。
「俺に告白しただろ。付き合ってくださいってさ。俺の事が好きなんでしょう?」
俺はイーチの嘘に待ったを掛けようとした。
「ちょっとイーチさん。それは」
イーチが脅してきた。
「約束したよね? 破るの?」
――イーチは卑怯だが、しかし約束は約束だ。
俺は何も言えなくなり、サエが怒っていないか確認した。サエは、かなり動揺しているようだった。
「告白したって……。それってあたしがイーチを好きなの知っていて……。陰でミズキがイーチに告白したってこと?」
イーチが抜け抜けという。
「そう、そう。そう言う事だよ。女の友情なんてそんなもんだよ。男が絡むと脆いよね。ミズキさんは顔は可愛いけど、心はそうでもないんだよ。サエさんは、ミズキさんと友達を止めたほうが良いと思うよ」
ミズキの顔色は白い紙みたいな色に見えた。
「そんな。まさか……」
サエはイーチとミズキを交互に見た。イーチは余裕ありげにミズキとサエを見た。サエは酷く怒っているようで、肩を震わせて、顔は鬼の形相だ。
――サエが吠えた!
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