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「あたしたちの友情を舐めんなよ! ミズキはそんな女じゃないから!」
サエに吠えられたのは、イーチだった。
予想外の展開にイーチが焦る。
「え! お前俺のこと好きなんだろう? お前は、俺に告白してきてその態度なの!」
サエが自分の頭を掻きむしる。
「うるさい! なんだよ。お前、お前って。あたしはお前じゃないよ! サエだって言うの! あーもう! イーチを好きになったあたしを、あたしは叱りたい! 行こう! イーチはやめた方が良いって、ミズキに言われていた理由が分かった!」
イーチが唖然とした表情で、サエとミズキを見る。
呆然とするイーチに、サエが冷たく言う。
「それにミズキがイーチを好きになるはずないじゃん」
イーチが不服そうに言う。
「何でそう思うんだ。俺はモテるんだ」
「知っているよ。でもミズキが好きな人は……」
サエの視線が一瞬俺に飛んだ。
――俺は何故サエが俺を見るのか分からない。
サエがイーチに視線を戻す。
「悪いけど。告白はなかった事にして」
「なかったこと? 何それ」
「もう私はイーチなんか好きじゃない。むしろ嫌い」
サエがみんなに「行くよ」と言った。
去って行くサエにイーチが吠える。
「くそ、何だよ! ブスのくせに! 俺に告白してくんなよ! 唇をテカらせて、キショいんだよ」
サエがイーチを睨む。
俺はイーチの暴言に驚く。
――流石にブスとキショいはないだろう。小学生の口喧嘩じゃないんだから。
しかしブスとキショいの言葉の破壊力は凄まじい。強気なサエの顔が、弱々しく萎びていく。
サエの様子を見て、サエの女友達が息を呑んだ。なんて声を掛けて良いか、たぶん、……わからないのだろう。
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