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すると、いつもははっきり意見をいわないミズキが動いた。ミズキがイーチに啖呵を切ったのだ。
「サエちゃんはブスじゃないよ。優しくてカッコいいんだよ。可愛くてハンサムなんだ! ブスはイーチくんだ! イーチくんの嘘つき! 大ちゃんの方が何十倍もカッコいいから!」
――危ないからやめろって言ったのに、言ってしまった。
イーチが鬼の形相でミズキに怒鳴る。
「なんだとぉ! お前、何様? 少し可愛いからって! 思い上がるな!」
イーチがミズキに向かって、手を振り上げた。ミズキが目をつぶって頭を腕で覆ってかばう。
俺はとっさに、ミズキとイーチの間に割って入る。そして、なんとかイーチの平手打ちを腕で受け止めた。女が相手だったので手加減して殴ったのだろう。俺でも受け止められた。するとイーチが俺の腕を掴んだ。イーチの握力は半端ない。俺は顔を歪める。俺とイーチが腕を掴み合って見つめ合う。
その時、ホームルーム10分前の鐘が鳴った。
するとイーチの取り巻きが、俺とイーチに近寄ってくる。俺は恐怖する。
――まさかイーチに加勢して、俺を袋叩きにするのか?
俺はバスケ部の面々を見る。
――顔が怖い。凶悪かつ凶暴に違いない!
近寄ってきたイーチの取り巻きが、俺に顔を近づけた。
――ヒィ。メンチ切られるの?
俺は息を呑む。
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