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完結編
俺たちは連れ立って教室に戻った。先頭にサエとミズキを含む仲間たち。次に俺。そしてその後から、イーチとそのお世話係たちが歩いていた。
前を歩くミズキの背中に、俺は心の中で謝る。
――もっと友達選べばいいのにと思ってごめん。ミズキはちゃんと友達を選んで付き合っていたんだ。
そして俺は、サエの背なかを見て、心の中で謝る。
――ごめん。俺はサエを誤解していた。サエは良いやつだ。
サエを見る俺に気がつき、先頭集団から離れて、俺の横にサエがやってきた。
そしてサエが、圧迫するような目で俺を見て言った。
「大塚!」
サエの眼力で、俺のダメな心を見透かされないか、ドギマギしてしまう。それでつい目を逸らしてしまう。
「……何だよ」
「さっき、カッコよかったよ。大塚も男の子なんだな」
俺は動揺した。
「あれは。そのぉ〜、咄嗟に……」
「ミズキを助けてくれてありがとう」
「あ、うん」
「ねぇ、あんな必死にミズキを守ったんだもん。大塚もミズキが好きなんでしょう?」
サエが、質問に答えない俺の肩を、バンバン叩いた。結構痛い。
「そろそろミズキに告りなよ。ミズキは待ってるよ」
「俺のことなんか、ミズキが好きなはずないだろう?」
「え? 好きだと思うけど? ミズキの態度見てたら分かるよね?」
「信じられないよ。俺なんか……。それにミズキは好きな人がいるって言ってたし」
サエがカラカラと笑う。
「だからそれ、大塚のことでしょう? 手も繋いだんだし」
「知っているの?」
「あ、ごめん。手を洗いたくないなんて、2日前にミズキが笑顔で言うから、理由を無理やり聞いた」
「でも、手ぐらい、友達でも繋ぐだろう?」
「そう思う? 女の子が、繋いだ手を洗いたくなくなるんだよ」
「それは……」
たしかにそうだなと俺も思う。
サエの顔が怖い。眉間にしわを寄せている。
「ところで、今ちょっと気になったけど。大塚は好きじゃない女の子と、ホイホイ手を繋ぐの?」
サエの目つきもめちゃめちゃ怖い。俺は墓穴を掘ったらしい。
「すいません。好きな女の子としか手を繋ぎません」
サエが頷き言う。
「じゃつまり、ミズキと手を繋いだって事は、そう言うことだよね?」
俺はミズキを好きだとは、まだ一言も言ってなかった。それがまんまとサエの誘導尋問に乗せられ、白状させられた形なった。
俺はモジモジと体をよじり「まぁ」と言った。
「やっと吐いたな」
サエがしてやったりと言う顔をして、話しを続ける。
「だからさ、ミズキの好きな男は、大塚だよ。私はミズキの好きな人くらい知っているよ。だってうちら友達だもん。だからミズキがイーチに告ったって言われた時、嘘つきはイーチだって分かったんだ」
サエがニヤっと笑って言う。
「そろそろミズキに告となよ」
俺は赤くなってモゴモゴ言う。
「でも、俺なんか……、ミズキに釣り合わない」
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