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さてこのグループのボスは、サエだ。
サエは特に可愛くもないが、明るくて元気なのがアピールポイントで、男女関係なく友だちが多い。でも俺はガサツで直球のサエが苦手だ。人の気持ちを考えないところがある。グイグイと自分の考えを押し付けてくる感じが、苦手なのだ。
俺はミズキが、何故サエと仲良くしているのかと思う。
――もっと友達選べばいいのに。
常々俺は、そう思っている。……言わんけど。
そのサエが言い放つ。
「あたし、イーチが好きだ。好き過ぎて、もうどうして良いかわかんない。今から告ろうかな」
情報通のイマイシが言う。
「え? そりゃ、イーチはカッコいいけど。隣のクラスの米山さんでさえ、振られたらしいよ」
俺はイマイシの情報に驚く。
(隣のクラスで2番可愛い米山さんが振られたのか。米山さんを振れるのか! それはすごいなぁ)
俺はイーチの凄さを実感した。なんせ米山さんを振れるんだから!
潤滑油系女子ヨシマイが言う。
「米山さんでもダメだったんだ。イーチはさぁ、ウチらの学年で一番のモテじゃないの?」
普通すぎて存在の薄いアサカワが言う。
「バスケで全国も行ったし。模試で、10位以内に常に入っているし。カッコ良きぃ」
ヨシマイがうっとりした目で言う。
「運動できて。顔良くて。頭いいしぃ。うちらじゃ相手にされないよ。うちらの中でイーチが落ちそうなのは……」
サエがヨシマイの言葉を遮って、地声で言い放つ。
「あー。付き合いてぇ。無理でも告白する。もしかしたら、ワンチャンスあるかもだし!」
それからサエは鋭い目つきでミズキを見た。
「ミズキはイーチをどう思う?」
「どうって?」
「あたしがイーチに告って、付き合っても良いと思うの?」
ミズキが言う。
「良いとか悪いとか……、好きなのは止められないよ」
ミズキが、俺の横顔をちらっと見た。
俺は、ちらっとミズキに見られただけなのに。
――俺の横顔に、ミズキの視線銃弾を痛いほど感じた。
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