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俺の後からソロソロとミズキが降りてきた。イーチは地べたに転がっている俺を見て言う。
「なんで、こいつが一緒なの? どうして一人で来ないの?」
「誰もいない場所に、イーチくんと二人きりは、良くないと思って。誤解されるよ。それに男の人とこんな場所に二人きりは怖いし」
「誤解って何を誤解するの? それに怖いなんて酷いなぁ。俺は優等生だよ。悪さなんかしないよ」
「うーん、そうだろうけど」
俺は立ち上がる。服についた草や土を払いながら言う。
「あの、俺はお邪魔でしょうから。土手の上に戻って待ちます」
イーチが威圧的な目で見てきた。イーチにとって俺はモブキャラでしかない。扱いがかなり粗雑だ。
「ああ、そうしてくれる?」
そして俺はそれを受け入れる。だってその通りだから仕方ないんだ。
「ええ。それでは」
俺は二人に背を向けて、土手を上ろうと階段に足をかけた。すると、今度は腕を引っ張られた。俺は振り返りミズキに言う。
「俺は上で待っているから、二人で話し合って」
ミズキは必死そうに見える。
「行かないで」
「え?」
「行かないで」
俺はミズキを見つめる。そしてミズキはイーチを見ている。
「あの。お話の前に、お知らせしたいことがあります。私には好きな人がいます」
「好きな人? それってまさか、そいつの事? たしか大塚くんだっけ? 隣のクラスの学級委員長している?」
――どうやら俺はミズキがイーチを振るための出汁に使われたようだ。ミズキにとって俺は好きな人には違いないとは思う。でもそれは友達としてだ。
出汁に使われたら気分を悪くするのが一般的だと思う。しかし俺は、出汁に使われたとしても、良いと俺は思う。ミズキが嫌がることから、俺は守ってやりたい。それで敢えて否定しなかった。
――どうせ出汁になるなら、俺は美味しい出汁になります!
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