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彼は初めての交際相手とのエピソードと、旅先での素敵な一目惚れのエピソードを教えてくれた。それはもう楽しくて、直前まで畏まった話をしていたことが嘘のよう。根掘り葉掘り聞かせてもらった。
もっと話したいと思うくらい盛り上がったけれど、もう22時を回りそうでそろそろ帰ることにした。
「あ、そろそろ帰るね。えっと、映画代が2000円で、スーパーの買い物は1000円しないくらいだったよね」
「気にしなくていいよ」
「駄目だよ。えっと、おうちのキッチン貸してもらったから3000円払うね」
立ち上がってリュックから財布を取りに行こうとすると、手を掴まれて止められた。そのまま引っ張られて、またソファーに腰を下ろす。
「____ハグしてみる?」
「…………ハグ?!ハグって抱擁のこと?!」
「ホウヨウ……そう、抱きしめる。お礼にハグしたいな。………イヤ?」
子犬のような瞳をして確認された。私の嫌がることはしないと最初に約束して、だから確認してきたんだろう。
「………ええと……ハグ?」
「そう、手を繋いだから次はハグ。無理なら握手でさようならしよう」
抱擁くらい妹や友達ともするし、ハグはできる気がした。
「………してみる」
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