●お礼のハグ

1/16
前へ
/483ページ
次へ

●お礼のハグ

 吉祥寺の映画館で、まさか解散を言い渡されるなんて思ってもみなかったけれど、なんとか一緒に作ることを取り付けた。  映画を一緒に見るだけで、軽く解散を言えるくらい、まこの中ではうすっぺらい関係なんだと突きつけられる。それはわかってたことなのに、結構傷ついた。  ずっと戸惑いながら、ただ付き合ってくれているだけ。    材料の買い物をしているとき、まこは家のことを軽く話してくれた。母親が12年前に亡くなってから、年の離れた妹のことを面倒見てきたらしい。  いろんな感情が、彼女の中にはきっとあるはずなのに、周りにはそう思わせないようにしてきたんだろうと推測でした。きっと、そうやって自分のことは後回しにしてきたんだろう。    家につき、二人でご飯を作りまじめる。  まこは、髪を結いて手を洗っていた。「これ切ればいいよね」と、用意した包丁をとって手際よく野菜を切り出していた。鍋をカップボードから取り出すと、まこは、すでに切り終わった野菜をその中に放り込んでいた。かなり手際がよく、慣れていることが伺える。  女性とご飯を作る経験は、そういえばいままでなかったな。
/483ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1995人が本棚に入れています
本棚に追加