私と掛け合わせたらいけない人

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 口角が上がっていて、伏し目がちな目で微笑んでいた。リアムは私の言葉にいつもなんだか儚げに微笑んでいる。不思議な人。  シアターが暗くなり、映画の宣伝映像が流れ始めた。それから本編の上映。  子どものときから見てる大好きなアニメ。映画は一年に一本、毎回絶対に見に行っている。映画の内容自体はカップル向けじゃないし、ロマンチックな内容とはかけ離れている。  だから、今回も楽しく見るはずだった。  それなのに、序盤にふいにポップコーンを食べようと手を動かそうとすると、しれっと繋がれていたのに気づいた。そして、左手で一粒とって口に入れつつ意識が繋がれた右手から伝わる温もりに集中してしまった。  実は、男の人と一緒に鑑賞すること事態が初めて。映画はみこや友達に付き合ってもらうばかりで、蒼汰くんとはこれまで一度も行ったことはない。  普通にポップコーン食べようとしただけなのに、気ままに映画見られなくなってしまった。男らしく角ばってるのにどこか温かい手と指が絡んで優しく握られている。これは、恋人繋ぎというやつ。  リアムをちらっと見ると、普通にじっくりと映画楽しんでいる。意識してるのは私だけらしい。
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