言の葉ビール

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「子供の頃に憧れていたけど、一度も買ってもらえなかったんでしょう」  男はふわりと私の手の上にカップをのせると、ビールサーバーから伸びているホースをぐいっと引っ張り出した。  手の中のカップになみなみとビールが注がれていく。  私は思わずカップの中身と男の顔を交互に見た。 「……これって……本当に普通のビールですか」 「いいえ、言の葉ビールです」  言の葉ビール。  一度も聞いたことのない銘柄だ。  男はホースを仕舞いながら淡々とした口調で続けた。 「これを飲むと、桜の木を辿って亡きひとが戻ってきます」  私はぐいっと半身をそらしながら、眉を顰めた。
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