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「何の用だ」
「ヒカリちゃんのこと、よろしく。相当ショック受けてるようだから」
「何で俺に言うんだよ」
「キミがいれば、ヒカリちゃんは大丈夫な気がするんだよね」
冬子は小首を傾げ、考えるように顎に指を当てた。
「パパたちはヒカリちゃんを溺愛してるけど、どっか抜けてる。その点、キミは冷静でしょ」
「フン。どーだかな」
何かあるだろうってことは分かってた。
膀胱が騒いでたからな。
と言いそうになって、カゲは口を噤んだ。
冬子からの「冷静」という評価には実感が湧かない。
荒ぶる膀胱と闘っているときの自分が「冷静」であるとは、とても思えないのだ。
ただ、当主と使用人たちが、ヒカリに変な虫が付かないようにと右往左往する姿は茶番だと思っている。
(じゃあ、あれは何だったんだろうな?)
カゲはふと思い出した。
「若先生なら大丈夫だ」という、橋倉の一言である。
あれはどういう意味だったんだろう。
考えていたらトイレに行きたくなってきた。
一定時間トイレに行っていないためだと思われる。
「じゃ、頼んだわよ」
冬子がカゲの肩をポンと叩いて去って行った。
カゲは、そのままトイレに向かう。
何気なく振り向いた冬子は、その姿を見て驚愕した。
(器用ね……内股で走るなんて)
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