箱入り令嬢は絶不調

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 同じ頃、胡桃沢 春平は離れの和室で本を開いていた。  彼は、メロドラマを視聴する趣味はない。  執事やヒカリとカゲが、一部屋に集って例のドラマを観ていることも知らない。  そもそも、この時間帯にあのようなドラマが放送されていることすら知らないのだった。  「むー、意味の分からんことばかり書きおって!」  以前、財界人が集まるパーティーで知り合いの会社経営者が配布していたビジネス本である。  付き合いで読み進めるも、立派なのは装丁だけで内容はすこぶる薄い。  パーティーで配るほど余るわけだ。  彼は本を放り出した。  代わりに、机上の白い封筒を手に取る。  健康診断の結果だ。  先日は、不覚にも大事な孫に心配をかけてしまった。  中身を取り出し、詳細な結果を確認していく。  「どれどれ。若先生によれば良い結果だという話だったが」  この健康診断も、孫が自分を気遣ってくれてのことと思えば自然と笑みが溢れる。  孫の成長を感じるのだった。  「ん? この記号は……」  春平の表情が俄かに曇った。
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