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箱入り令嬢、屈する
件のメロドラマは佳境を迎え、ついにヒロイン(?)と不倫男の妻が対峙するに至った。
『あなた、自分が何を言っているのか分かってんの!?』
『分かっています』
ヒステリックに叫ぶ妻と、目を逸らさないヒロイン(?)。
不倫男は静観の構え(最大の謎)。
『奥さんがいたって構わない。私、フリ男さんを愛しているんです!』
ここでまさかの感動的ミュージック。
何故かダメージを受ける妻。
彼らは、今日も視聴者たちを大いに混乱させた──。
ヒカリとカゲは、今日も橋倉の部屋に集っていた。
ヒカリと橋倉は死んだ魚のような目をテレビに向けているが。
「カカカ、茶番だな」
カゲは、ドラマが茶番になればなるほどテンションが上がるようだ。
もはや、彼らがこのドラマを視聴する意味を誰も説明できない。
強いて言えば、「これをどう収めるつもりだ、え?」という興味だったり怖いもの見たさだったり。
「せっかくここまで来たし」というセコい精神だったり、ある種の挑戦だったり根性だったり。
するのかもしれない。
カゲが言った。
「だーれが作ってんだよ、こんな話」
おまえを生み出した人物である。
「何でこんなもん放送してんだろな」
物語の都合上、と言う他ない。
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