共闘

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   蓮乃宮女学院高等部では、ちょっとした騒ぎが起こっていた。  「どういうことなの!? 姫華さんがあの女と……」  「人払いまでなさるなんて!」  女の子というのは何かと大袈裟だ。  ヒカリと姫華が、ランチを共にしているだけなのに。  護衛の鈴木さんは、表向き普通に給仕をしてくれている。  姫華について食堂へ向かおうとしたら、カゲは面白くなさそうな顔でフイと姿を消してしまった。  姫華の計画に乗ったことを見抜かれているのだろうか。  こんな姿を見られなくて良かったような、不安なような。  でも、やはり心許なさの方が大きかった。  「とにかく、奥さんについて良くない噂を流すの」  姫華がステーキにナイフを入れる。  「でも、まったくの嘘では信じてもらえない。まずは情報収集が必要よ」  真っ赤なドレスはまるで戦闘服だ。  やはり、彼女には迷いがない。  「で。あなた娘と仲が良いんでしょ? いろいろと訊き出してちょうだい。それとなくね」  協力っていうか。アンタ、命令してるだけじゃない。  ヒカリは、げんなりしながらパンにバターを塗りつけた。  「公園に行けば会えるだろうから別にいいけど」  子供と遊ぶのは嫌いじゃない。  美亜ちゃんのことも。  でも、誠先生の子供だと思うと、ヒカリはやっぱり辛い。  「アンタも来れば? ついでに仲良くなっとけばいいじゃない」  「私、子供は大嫌いなの」  汗にまみれて子供と戯れるなんて冗談じゃないわと、姫華は顔をしかめた。  じゃあ、アンタは何をするんだよ──。  (こんなことだろうと思ったわ)  ヒカリはパンにパクついた。  先が思いやられる。  疲れだけが溜まった。  
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