ヒカリとカゲの、すれ違い

5/5

23人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
 「そこの護衛。生徒用の席に座らないで!」  教師から鋭い声が飛ぶ。  この学院は、護衛がだらしないと怒られるのである!  ここに通うお嬢様たちの座席は、特注の超高級ソファだ。  カゲはここで寛ぎながら、ヒカリたちの話をしっかり聞いていたのであった。  (やべーことになってる……)  しかし。  カゲは首を傾げた。  (尿意が来ねえんだよな。本当に大丈夫なのかな?)  ソファの上にあぐらをかく。  「聞こえていないのですか!? 生徒用の席に座らない!」  教師は相変わらずヒステリックな声を上げている。  (ジジイどもも黙って見とけとか言うし……どうなってんだ?)  尿意に悩まされないことに、解放感はあった。  しかし、元々あったものがないと変な気分になってくる。  「泥棒さん、降りて!」  鈴木さんが呼びに来た。  「泥っ? 何を言っているのです!?」  「あ、申し訳ありません」  とばっちりを食う鈴木さんである。  「アータたちは胡桃沢さんの……? 名門の家の護衛がそんなでどうするのです!? 大体アータたちはいつもアータラコータラ」  教師からの説教は続く。  事は、動き始めてしまった。  尿意が来ないまま。  それでも時は経ち、週末がやってくるのであった──。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加