何らかの予感…

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 大量の花束が、雪崩のように落ちてきた。  待合室の巨大フラワーベースに飾る用なので、花の量がハンパないのだ。  バラの他に、ガーベラやトルコキキョウ、ミニヒマワリ、カラーなど種類も豊富である。  「ああっ、申し訳ありません!」  キャップを被った業者の男性はあたふたと花束を拾い始めたが、  「うわぁー、ど、どうしよう! 患者様の邪魔にならないようにって先輩から言われてるのに」  大失敗で頭の中が真っ白らしく、作業はなかなか捗らない。  「ああ、別に良くてよ」  姫華は作業が終わるまでのんびり待つつもりらしく、もう一度ソファに腰掛けた。  ヒカリは足元に落ちた花束を拾い上げている。  (良くない!!)  のんびりしている場合じゃないカゲである。  尿意のレベルが急上昇しているのだ。  コーヒーか?  コーヒーの作用なのか?  「ほらよ。ここに入れればいいか?」  冷泉家の護衛も協力して花束を片付ける。  ふと横を見て、彼は目を剥いた。  胡桃沢の護衛が、軟体動物並みに身体を捻っているのだ。  そして「コーヒーか、でもなんで、オカシイ」などと、聞き取れないくらいの声でブツブツ言っている。  (マジで何なんだ、コイツ──)  先日は麦茶ごときに至福の表情を浮かべ、今日は打って変わって絶望を体現。  狂ってやがる……。  一体どういう環境で仕事してるんだ。  冷泉の護衛は屈強な身体を震わせた。  
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